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水戸地方裁判所 昭和43年(わ)164号 判決 1968年7月22日

本店所在地

水戸市石川町四、四六八番地

株式会社あけぼの印刷社

右代表者

代表取締役 山田好治

本籍並びに住居

同市西原町三、五六八番地の九

会社役員

山田好治

大正一三年七月三〇日生

右の者等に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は、次のとおり、判決する。

主文

被告人株式会社あけぼの印刷社を罰金四〇〇万円に処する。

被告人山田好治を懲役四月に処する。

但し、被告人山田に対しこの判決確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人山田は、昭和二一年八月頃からあけぼの印刷所なる商号のもとに印刷業を営んでいたが、同三七年八月一日各種製版印刷及び製本並びにこれに附帯する一切の業務を目的とし、資本金を金二〇〇万円、本店所在地を水戸市石川町四、四六八番地とする、いわゆる同族会社である被告人株式会社あけぼの印刷社を設立し、自らその代表取締役に就任してその業務全般を統轄し、同四〇年三月一八日資本金を金五〇〇万円に増資したものであるところ、被告会社の業務に関し、その業務の拡大、技術向上等のため多額の資金を要するところから、法人税の支払いを免れてこれをその資金に充てようと企て、茨城県内の中学校生徒の学力テスト用印刷物の販売及び学力の綜合分析等を業務内容とする同社の一部門たる茨城教育研究会の売上金の脱漏、架空仕入及び職員給与の水増等不正の方法により、その所得を秘匿したうえ

第一、同三九年八月一日から同四〇年七月三一日までの事業年度において、被告会社の所得金額が金三、九五〇万六、八五一円であつたのにかかわらず、同四〇年九月三〇日所轄水戸税務署長に対し、同事業年度における所得金額は金九六〇万一、七七五円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額金一、四三六万四、六〇〇円と右申告税額三三〇万二、九八〇円との差額金一、一〇六万一、六〇〇円をほ脱し

第二、同四〇年八月一日から同四一年七月三一日までの事業年度において、被告会社の所得金額が金二、五〇八万五、八七一円であつたのにかかわらず、同四一年九月三〇日所轄水戸税務署長に対し、右事業年度においては金一三八万四、五一〇円の欠損を生じた旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて被告会社の同事業年度における正規の法人税金八八二万三、一〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示第一の事実につき

一、押収にかかる学力テスト台帳一冊(中学一、二年)総勘定元帳一冊(昭和四三年押第五二号の八、及び一四)

一、神尾善三(昭和四二年七月二六日付)、西村音吉、田代寿一、西野一郎、小貫四郎の各答申書

一、小野崎忠平の証明書

一、国税査察官作成の同年一〇月二〇日付A法人税決議書

同第二の事実は

一、押収にかかる学力テスト台帳五冊(中学一、二年第二回、同第三回、中間擬模テスト、中学一、二年第一回、テスト申込及び会費内訳台帳)及び総勘定元帳一冊(同押号の九ないし一三及び一五)

一、目黒敏夫、小林茂兵衛、山田タカ(同年九月二日付)の名答申書

一、山田富夫の同年六月二七日付、同月二〇日付、及び同月三〇日付各供述調書

一、東京地方貯金局長作成の「郵便振替口座の受払いについて」と題する書面

一、国税査察官作成の同年一〇月二〇日付B法人税決議書

以上全般の事実につき

一、押収にかかる被告会社の確定申告書、修正申告書各二通、金銭出納帳、売掛金ノート、売上帳各一冊(同押号の一ないし七)

一、商業登記簿謄本及び定款各一通(いずれも写)

一、山田タカ、山田富夫、大平輝代、後藤紀子、須貝俊子及び川崎ときのの検察官に対する各供述調書

一、山田タカ、山田富夫の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、山田タカの大蔵事務官に対する同年六月二九日付、同年九月一日付各供述書

一、大平輝代、神尾善三(同年八月七日付)、吉田市郎(二通)、石井裕子、森沢信夫、北村富男、川嶋文夫、今瀬保の各答申書

一、宮田東海男の銀行本店調査関係書

一、被告人山田の当公廷における供述

一、被告人山田の検察官に対する供述調書三通

一、被告人山田の大蔵事務官に対する質問てん末書五通

一、被告人山田の大蔵事務官に対する供述書四通

一、被告人山田の答申書四通(但し、同年九月二日付、C、Dを除く。)

を綜合してこれを認定する。

(法令の適用)

法律に照らすと、被告人山田の判示所為は各法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号、被告人株式会社あけぼの印刷社については各同法第一六四条第一項、第一五九条第一項、第七四条第一項第二号に該当(但し判示第一の所為についてはいずれも同法附則第二条適用)するところ、被告人山田については所定刑中懲役刑を選択し、以上はいずれも刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により、各罰金額を合算した範囲内において、被告人山田に対しては同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪に併合罪の加重をなした刑期範囲内において、いずれも主文第一、二項掲記の刑を量定し、被告人山田に対しては情状に鑑み同法第二五条第一項を適用し、この判決確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

よつて、主文のとおり判決する。

検察官 吉田賢治 関与

(裁判官 長久保武)

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